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公民館の風第530号(通算1162号)

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 公民館の風 No.530(通算No.1162) 2018年12月29日発行    編集・発行  内田光俊 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- ◆九条俳句掲載へ◆公民館学会研究大会2日目報告◆日本ESD学会中国地方 研究大会案内◆日韓学術交流研究大会◆編集後記 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=

■◆   市民の力の勝利  12月28日さいたま市より             申し入れ書に対する回答がありました。  ◆■

----- ◆◆「九条俳句不掲載損害賠償等請求事件」上告棄却決定を受けての声明          2018年12月25日  九条俳句訴訟弁護団 ----- 【以下、関連新聞記事の紹介です。】 ------------- ◆◆  さいたま市9条俳句掲載へ 「作者の気持ちに配慮」 ◆◆  九条俳句訴訟で、市に賠償を命じた判決が確定したことを受けて、市は25 日に句を掲載すると明らかにしたことを伝える記事。判決は掲載義務はない としたが、細田真由美教育長が記者会見で「作者の気持ちに配慮した」と理 由を説明したことも伝えています。 2018/12/25【日本経済新聞社】 https://s.nikkei.com/2AgNkxC --------------------------------- ◆◆ さいたま市、9条俳句掲載へ「作者の気持ちに配慮」         不掲載は違法との判決確定受け、女性に謝罪の方針 ◆◆  九条俳句訴訟で、さいたま市の細田真由美教育長が会見を開き、「作者の 気持ちに配慮する」として、女性に謝罪し、俳句を公民館だよりに掲載する 市の方針を発表したことを伝える記事。教育長は、俳句の作者に公民館だよ りに俳句掲載の請求権がなく、市にも掲載義務がないとしつつも、「作者の 人格的利益を侵害したとして、損害賠償を命じた判決が確定した点を真摯に 受け止め、謝罪する」としたこと。「作者の気持ちに配慮し、市のこれから の公民館のあるべき姿につなげたい」として、できるだけ早い時期に俳句を 公民館だよりに掲載することを表明したと伝えています。 2018/12/26【埼玉新聞】 https://bit.ly/2EL8uae --------------------------------- ◆◆ さいたま市、九条俳句掲載へ 教育長が直接謝罪へ  市長との面談には応じず  ◆◆  最高裁決定を受け、憲法九条について詠んだ俳句の公民館だよりへの掲載 決断して発表したさいたま市は、教育長が作者の女性に直接謝罪する意向を 示したものの、訴訟を支援してきた「『九条俳句』市民応援団」などが求め てきた清水勇人市長との面談には今後も応じない意向を示したことを伝える 記事。教育長は女性への謝罪と俳句の掲載方針を説明し、謝罪方法について は「作者の考えも伺いながら、どのように行うのか検討して決めたい」とし たとのことです。記事ては、この訴訟を契機に市民のための生涯学習振興や 公民館活動を充実させる考えから掲載を決めたことや、今後は多様な市民の 意見を取り入れるため、公民館だよりの編集に市民が参加する仕組みを設け る意向も示したことも伝えています。清水市長と作者の女性の面談について は、公民館業務が市教育委員会の所管であり、清水市長から教育行政の全権 を委任されていることを理由に面談は拒んだとのことです。 2018/12/26日【東京新聞】 https://bit.ly/2RgxVqJ --------------------------------- ◆◆ さいたま市、9条俳句掲載へ 作者「諦めず闘って良かった」 ◆◆  九条俳句訴訟で市の賠償を命じた判決が確定したことを受け、さいたま市 が一転して俳句を掲載する意向を示したことを伝える記事。原告の女性は、 「一審判決が出た直後に決断してくれればなお良かったが、小さなことでも 訴えて諦めずに闘うことで結果が出たことは非常に良かった」とのコメント を出したことを伝えています。 2018/12/26【東京新聞】 https://bit.ly/2EOJTlF --------------------------------- ◆◆ 9条俳句問題でさいたま市長が謝罪 ◆◆  九条俳句訴訟の判決が確定し、市教委が俳句の掲載方針に転じたことを受 け、清水勇人市長が記者会見で謝罪したことを伝える記事。「(判決を)重 く受け止めている。市の代表者としてお詫び申し上げたい」と述べたとのこ とです。しかし、作者との面会については「現時点で直接、作者の方とお目 にかかることは考えていない」と拒んだとのこと。 2018/12/28【産経新聞】 https://bit.ly/2CDGrIB -------------------------------- ◆◆ 【社説】9条俳句掲載 表現はまだ梅雨空の中 ◆◆  憲法九条を詠んだ俳句がやっと掲載になるが、単なる市側の事なかれ主義 だったのか、今も表現の自由は曇りの中にあるのではないかと問う東京新聞 の社説。経過を説明し、事件が起こった2014年は政府が集団的自衛権の行使 容認を閣議決定した年であり、誰もが危機を感じ、声を上げてよかったと言 う。そして、その一人の俳人の故金子兜太氏らが選者となって、同紙の読者 投稿「平和の俳句」(15~17年)が始まるきっかけになったこと、そして3 年間に13万句以上も寄せられたことも紹介しています。治安維持法違反とさ れた渡辺白泉の句 <戦争が廊下の奥に立つてゐ(い)た>を引き、この句 と比べてみてほしいと呼びかける。この九条俳句が排斥されるならば、現代 もまるで治安維持法があった暗黒時代と同様になってしまうと言う。そして 社説は政治的中立性に幻惑され排除されるのは、九条俳句ばかりではないと して、護憲集会で公的な会場を貸さないとか、行政主催の講演会で護憲派ゲ ストを取り消すなどの不合理な動きをあげる。モデルのローラさんが沖縄の 辺野古埋め立て反対の署名を呼び掛ける投稿をしただけで物議をかもすこと も紹介して、なぜなのかと問う。自由社会でありえない横暴さがまかり通っ ているとして、公権力は政権の意向を忖度しているのか。それこそが問題な のにとして、「戦争が廊下の奥に立っている」時代にも等しい空気が何とも 息苦しいと結んでいる。 2018/12/28【東京新聞社説】         https://bit.ly/2QTSx8Z --------------------------------- ◆最高裁判決まで争ったことはお粗末な対応だと発行人は思いますが、さす  がに高裁判決で、「思想、信条を理由に他の俳句と異なる不公正な取り扱  いをした」と認定されたわけですから、不掲載を続けることは、指摘され  たように思想、信条を理由に不公正な取り扱いをするという立場を変えな  いということになるわけです。それは自治体としてはいかにもまずい。こ  こは掲載しかない。最高裁で上告を棄却されたのだから、議会等で突っ込  まれても言い訳もつくし、ということではないかと勘繰りたくなります。  だいたい自治体というか役所というものは、一度言いだしたことをひっこ  めるには理由が必要で、あれはこちらの間違いでしたとは言わないもの。  間違いでしたと言うには責任が伴いますから。 ◆一方で、さいたま市教委の回答文によると、「より一層の生涯学習の振興  と公民館における学習活動の充実を目指し、本市のこれからの公民館のあ  るべき姿につなげたいと考え、本件俳句を公民館だよりに掲載いたします」  とあるし、「公民館だよりの記事の編集につきましては、今後、市民の皆  様の御意見がますます多種多様なものになると見込まれますことから、市  民参画による編集の機会を設けるなどの仕組みづくりを進めてまいります」  とも述べています。さらに2についてでは「職員の更なる資質向上が求め  られますことから、今後も引き続き職員研修の充実を図ってまいります」  としていますので、今まで以上の充実策が講じられると期待したいところ  です。 ◆しかし、今回の判決でも学習権の保障としての公民館の事業やその一環と  しての公民館だよりの発行は議論の中心にはならず、思想、信条を理由に  した不公正な取り扱いが違法だとされたにすぎません。それはそれで大変  大きな影響を現場に与えるものではありますが、先の回答文にあった、市  民の御意見がますます多種多様なものになるから、市民参画による編集の  機会を設けるなどの仕組みづくりを進めるというのも、社会教育の論理か  らというより、単に行政運営上の姿勢として述べているだけにも読めます。 ◆この点に関して、日本公民館学会の今年の年報に埼玉大学の安藤聡彦さん  が書かれている論文「公民館のアイデンティティ・ロスト-九条俳句不掲  載事件再考-」が「三橋公民館に集約的な形で現れたさいたま市における  公民館のアイデンティティの揺らぎと喪失」を「各公民館だよりを通覧し  てみても、そこから学習情報提供以上のものを読み取ることはおしなべて  困難であり、住民が公民館を学習機会提供機関以上のものとしてイメージ  することは容易ではない」ことを指摘されていることは、なるほどと思わ  せられます。一方で、安藤さんは今回の事件を「公民館に対するアイデン  ティティ再生の芽生えとして理解したい」として、「俳句会の実践の中に  『学びと文化創造の公共空間』としての公民館が存在していたことが再発  見され」「その再発見は、『公民館カフェ』という公民館の原理と各地の  実践に学びつつ、さいたま市の公民館の現状を問い、そのこれからのあり  ようを模索する小さな市民活動をも生み出し現在に至っている」こと、さ  らに「現役職員たちによる公民館実践をめぐる自主勉強会がとりくまれ始  めていることも希望である」と述べています。そうであるなら、いっそう  さいたま市の公民館職員さんたちとのつながりを作って、共に学ぶ機会を  つくれないかと思ってしまいます。            (発行人) =============================================

■◆   金沢で日本公民館学会の研究大会の二日目の様子          長野県の木下さんのFBの投稿でご紹介します ◆■  公民館職員の養成・採用・研修について考える~研究大会二日目 【目次】 ○ 人材養成や地域分析の知見から学ぶ~自由研究  ▽ 公民館主事の専門性を問う~植原孝行さん  ▽ タイ農村部の学習センターと職員の役割~ペンタム・ピヤワンさん  ▽ 岩手県を例とした公民館と農業改良普及事業との協働~安藤耕己さん  ▽ 山村における伝統食の生産販売と暮らし~松本大さん  ▽ 異なる時代や国・地域を鏡として学ぶ ○ 公民館職員の養成・採用・研修について考える  ▽ 社会教育をめぐる大きな動きの中で、改めて人材養成を考える   ~石井山竜平さん  ▽ 佐賀県における職員研修のねらいと内容~上野景三さん  ▽ グループ研修を核とした、佐賀市における公民館職員の研修   ~田中真由美さん  ▽ 宮城県における社会教育・公民館職員研修のねらい~蛯名博人さん  ▽ 職員自身が企画者となって取り組む研修活動の実際~菅原綾さん  ▽ 課題研究「公民館職員の養成・採用・研修」を進めるために   ~石井山竜平さん  ▽ 多様な主体のプラットフォームへ~内田光俊さん ○ 社会教育を広くとらえ、多彩な現場で役立つ人材となる =============================================

■◆   2018年度日本ESD学会中国地方研究大会のご案内  ◆■

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■◆   第10回日韓学術交流研究大会の参加者募集のお知らせ(再掲)                 締め切りは1月10日です   ◆■

================================================== ■編集後記 ◆冒頭で九条俳句訴訟のその後を取り上げました。さいたま市は当該俳句の  公民館だよりへの掲載を決めました。遅すぎると言うべきでしょう。しか  し、今回の事件と訴訟を含めた運動は、大きな意味を持っています。少な  くとも同様の事態は起こり得なくなったこと。そしてそいたま市内でも公  民館を巡って新たな変化も生まれていることが安藤聡彦さんの論文でわか  ります。ちなみに、紹介した論文では大宮市からさいたま市へと変わる中  での公民館の歴史や三橋地区のことも紹介されていています。その中で公  民館のアイデンティティが生成され、喪失されていく経過も書かれ、最後  にその再生の動きも紹介されています。さいたま市(旧浦和市)の公民館  と言えば、発行人などは何度もお世話になった片野親義さんを思い浮かべ、  あのさいたま市でなぜ?と感じたものです。それだけにぜひ一読をお勧め  します。 ◆東京新聞は社説で取り上げました。政権に忖度するのは財務省等の国家公  務員だけではないということなのでしょう。そういう時代の空気をつくる  ことが危ないと警鐘を鳴らしているのだと受け止めました。自治体関係者、  特に公民館関係者は心して読まねばなりません。公民館は戦後生まれ、そ  の公民館の歌には「自由の朝」という副題がついています。その公民館が  自由を圧殺するお先棒を担ぐことなどあってはならぬことです。さいたま  市の公民館関係者は毎朝自由の朝を歌ってから仕事についてもらいたいと  ころです。 ◆前号に続いて公民館学会の研究大会2日目のご紹介を、長野県の木下さん  のFBの投稿を転載してお伝えします。文中に発行人も登場するのですが、  少しだけ補足を。僕が伝えたかったことは、公民館職員の研修は到達した  い職員像と職員集団像を市民と職員で描いて、それとのギャップを埋める  ための課題を研修と実践の中で達成していくことになるということ。その  公民館職員像は、当然ながら目指すべき公民館像と連動するはずのもので、  だから公民館としてどんな役割や機能を果たすのかを明確に描いて方針や  事業計画に整理しておかないと、研修の課題も定まらないこと。今まさに  岡山市では公民館の基本方針作りをしており、方針をもとに研修のあり方  へ落とし込んでいくことが必要と考えていること。  佐賀と宮城の報告から受け止めたことは、研修の積み上げの大切さとグル  ープでの取組の大切さ。何より研修の受け手である職員自身が研修をつく  ることに参画することの効果で、職員研修も公民館の事業のように取り組  まれるべきこと。市民を対象にした事業を市民と共に企画し運営するよう  に、研修も行うべきもので、当然ながら評価も行う必要があること。  公民館学会として公民館職員研修ハンドブックでも発刊するつもりでやっ  てみてはどうかというて提案もしました。報告された中で声なき声を聞き  とることの大切さも出されていましたが、それを基本方針に書き込んでい  ることを紹介して、方針や事業計画にきちんと書き込むことでそれを公民  館の仕事として明確に位置付けることができるから、当然そのための研修  も必要になるし仕事として取組むことになることも話しました。  また、集合研修と実践との往還をきちんと行うことやその実践の場でのOJT  を研修として位置づけることの重要性、また、そうした研修の取組全体を  個々の職員はポートフォリオ的なものを作って自分が身に着けるべきこと  がらをどれほど達成できているかを確かめつつ研修を進めていくことがで  きるようにすることの必要性も話しました。  岡山市の基本方針作りの中で、NPOの皆さんと語り合う場をつくったとこ  ろ、NPO同士にとっても良い機会になったと大変好評であったことから、  そうした学び合いの共同体づくり(プラットフォームづくり)を考えてい  るけど、それは研修にとっても有効だと思うこと。  そして基本方針の中で地域の未来プランづくりを掲げていることも紹介し  つつ、10年後を考えると、5GがスタートしSociety5.0の時代になっている  はずなので、研修に集まりにくいという条件も、新しい技術を使って乗り  越えることができるかもしれないから、そうした可能性もさぐりながら考  えていくべきことを話しました。 ◆今号も長くなってしまいました。この「風」は病室で作っています。26日  にヘルニア除去手術を受け、翌日からはリハビリがはじまり、自分で立っ  て歩けています。まだ右足の感覚が鈍くて、念のために歩行器を使って歩  くようにしていますが、だんだん良くなっていくと思います。世界最小の  内視鏡を使っての手術で、前回と同じ部位なので腰椎の真後ろからではな  く、少し右から内視鏡を入れての手術でしたが、傷口はボールペンの直径  程度だけに痛みもわずか。前回のような血抜きのドレーンもなしでした。  年が明けて少しすれば退院できる予定です。         (光俊)

About Me.

「公民館の風」の発行人。岡山市で社会教育主事を30年あまり務め、中央公民館にも9年間勤務。現在、生涯学習課公民館振興室で公民館事業の指導等の仕事をしています。

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